知床観光船「知床半島沖」(20人死亡)残り6名行方不明(2022年4月23日)~海難事故の事故・捜索状況詳細 (随時更新中)

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知床遊覧船 KAZUⅠ遭難

2022年4月23日(土) 、有限会社知床遊覧船所有の観光船 KAZUⅠ(カズワン) (19トン・定員65名)が、知床のオホーツク海(知床岬灯台の南西約14キロの海上)で消息不明となったニュースの詳細です。
<注釈> 知床観光船は観光する船の事で5社ほどあり、今回の船会社の名前は、知床「遊」覧船と言う会社名。

通報状況に関しては当初の報道も間違っていたようで、少しずつ新たな状況が分かって参りましたので、下記の再編集しなおしました。
また、新たなわかった情報の追記が多数の為、文章的にわかりにくくなっておりますこと、お詫びを申し上げます。

事故になった2022年4月23日朝8時頃、KAZU1の船長・豊田氏と社長が当日クルーズの打合せ。
船長より午後の天気が荒れる可能性があるが、当日午前10時からのクルーズは出航可能との報告。
この時点での風と波も強くなかったので、海が荒れるようであれば引き返す条件付き運行とすることで、出航を決定したとしている。
当日、会社の事務所で乗客を案内した女性も、気象条件としては「今までの古いメンバーでやってても、出たと思う」「でも(天候が)悪くなるのわかってるから、どこか途中で引き返して・・。」と証言している。

午前8時30分、KAZU3の臨時で雇った船長より、事務所の無線アンテナが故障(破損)しているとの報告を受け、社長は9時10分頃に業者に修理を依頼したとしている。
無線故障は、携帯電話や隣接する他の運行会社の無線で、船とのやり取りも可能であるため、出航を停止する判断はしなかったと言う。
<補足> 無線の設置は強制義務ではない。仮にアマチュア無線を使用していた場合だが、アマチュア無線は個人が楽しむものであり、普段から仕事・業務に使用していた場合には、他の会社も含めて法に触れる可能性があるかも知れない。ただし、緊急通報でアマチュア無線を使用するのは法律でも許可されている。

午前10時、KAZU1はウトロ港を出港した。
出航時に「波がけっこう高いけど、冒険だと思って楽しんでくださいねー!」と言うアナウンスが船から聞こえたと言う。

11時19分にカニシュの滝付近。(のち回収された写真のデータより)
まだ波は穏やかだった模様。

時間は不明だが、社長は病院で出産した奥様・子供の退院日だったため、11時頃社長はクルマで北見市向かいし、その途中で事故の報告を受けた模様。
知床には夕方に戻った。




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4月23日午後1時ごろ、他社(ゴジラ岩観光)の従業員が事務所を訪ね、1時に帰着予定の船の状況を聞くと「船長の携帯電話がつながらない」との話だった。(知床の海はAUだと繋がりにくいのが実情、ドコモは繋がる)
<注釈> カズワンの事務所の無線アンテナは2022年1月頃に強風で壊れたままだった。船長が甲板員の曽山さんがドコモだといいなと言っていたという話も。

<注釈> 私も離島に行くことがあるため、スマホはドコモ回線にしている。ただし、ドコモ通信障害などに備えて楽天回線のバックアップ機も必ず持参している。

そのため、自分の会社の事務所に戻り、船舶無線の電源を入れて無線通信を試みると、数分後に「カシュニの滝辺りにいるが相当遅れる」との返事があったと言う。
2回目の無線では「波が高くなった。ゆっくり航行するので港に戻るのが遅れる」と状況変化を報告。
3回目の無線交信で「大変なことになった。浸水していてエンジンが止まっている。沈むかもしれない」「そのうちに、バッテリーが落ちるかもしれない」「船が傾いている」「救命胴衣、着させろ」と切羽詰まった様子の声が流れてきた。(無線通信はこれが最後)
そのため、午後1時13分、ゴジラ岩観光の従業員があわてて海上保安庁に118番通報。

通報内容は下記の通り。

アマ無線で(沈みそうだ)と言ってきた。
シレトコユウラン船のカズワン。
乗客はいる。
カシュニの滝あたり。

 「もうだめです。もうバッテリーが落ちると思います」

無線でやり取りもバッテリーが浸水すると不通になると言う事で、船長に対し、乗客で誰かがドコモなら、携帯の電波が繋がるかもしれないので、電波立っている携帯があれば、118番に直接連絡を取り合ってくれと依頼。
すぐその行動をしたのか、午後1時18分頃、KAZUⅠの船長から携帯電話にて海上保安庁に118番。

カズワンからの通報内容は下記の通り。

カシュニの滝の近く
船首 浸水。
沈んでいる バッテリーダメ
エンジン使えない
乗客10人くらい

どうやら、この船から118番通報が行われたのは、船長は自分の携帯が繋がらない(電波が弱い?)ため、乗客の携帯を借りて海保に通報したらしく、観光船からはこの1度きりだった模様。
その後、海保は何度も電話したが繋がらなかった模様。
船には衛星電話も設置していたようだが、会社から電話しても繋がらなかったとしている。(船長は、エンジンの起動などを試みてエンジンルームにいたなどの可能性も考えられる)

時間はまだ不明だが(その後13時20分と発表)、佐賀県有田町の岩永さんは、慌てたような様子で妻に電話し「船が沈没しよるけん、本当にお世話になった、今までありがとうね」と伝えた。

<追記> 別の乗客の電話記録がわかった(13時21分頃)
「船首が浸水して、船が沈みかかっている。浸水して足まで浸かっている。冷たすぎて泳ぐことはできない。飛び込むこともできない」
この電話が繋がっていたのは13時26分頃までとの事。

カズワンは13時26分以降からそう長くない時間の間に沈没したとみられる。

午後1時47分、一管と知床遊覧船の会社とのやり取りは下記のとおり。

一管より:カズワンはどうなった?
漁船は出られないと言われた
ヘリじゃないと間に合わない 沈む
LJ(ライフジャケット)はつけさせた
船とヘリ手配中

<新しい情報> エンジンが止まると排水ポンプも止まる構造も多いので、波をかぶると海水が船内に貯まる一方になる。118番するよりもっと前の段階でエンジンが止まり漂流中、再起動に格闘したが、そのうち浸水してきた(波を受けて排水ができない)と言う状況だったのかも知れません。人が住まない地の果てで4Gは当然繋がらないエリアです。海上3Gの電波も弱く、電話しようにもなかなか繋がらなかったとも考えられます。

乗客・小柳宝大さんが撮影した動画の最後が14時6分。
沈没船から見つかったカメラSDカードの状態が悪く撮影内容は解析できていないが、時間はわかっている次第。
沈没時間に近いものと推測できる。

14時16分、一管と知床遊覧船の会社(船ではない)とのやり取りは下記のとおり。

乗船者は26人、うち大人22名、
子供2名、船長1名、甲板員1名
全員LJ着用済み
くり返し携帯に架電するも連絡とれず

午後3時頃、網走から海保の担当者が会社事務所に到着し、乗船名簿を元に乗客の携帯に電話するも全員繋がらず。

海上保安庁は根室海上保安部・羅臼海上保安署が最寄りとなります。
恐らくは、PM-15てしお、PC-120かわぎり(むらくも型)が直ちに出動したと推測されます。
また、網走海上保安署のPM-11ゆうばり(てしお型)など、他からも応援が派遣されていると考えられます。
回転翼機(ヘリコプター)は、第一管区海上保安本部・釧路航空基地が近いです。
ただし、航空機が出動したとの報道もありますので、その場合、千歳航空基地から飛ばしたと考えられます。
そして、強風の中、航空機が16時30分頃現場に到着。(航空機が飛べるくらいの強風なので、すごく荒れていたと言う事でも無さそう)
巡視船は18時頃に到着しましたが、まだ観光船は見つからず、26人の安否不明とのこと。
<追記> 巡視船5隻、航空機2機を派遣との事。→ 巡視船6隻・航空機4機に増援。→ 自衛隊に災害派遣要請、北海道警のヘリも捜索に参加。
<追記 >航空自衛隊はUー125A救難捜索機、海上自衛隊はPー3C哨戒機、陸上自衛隊はヘリコプターUHー1などが捜索に参加。大湊から護衛艦「せんだい」も出航。




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発表によると26名の内訳は、乗客24名(うち子ども2人)、船長・甲板員との事。
<追記> 未就学児から70歳代まで13グループ。

天候は曇り、外気温は夜間4℃くらいになります。

観光船は、恐らく朝10時出航の一番の長距離遊覧(3時間)「知床岬コース」での航行中だったと推測致します。
予定では、13時頃にはウトロ港に戻る予定ですが、その頃、まだカシュニの滝沖だったことを考慮しますと、やはり、波が高くて船のスピードを上げられない状態、低速で航行していたものと推測致します。(ひょっとしたら機関故障も)
朝10時はまだ波風がない状態で、午前11時ごろから波風が若干出てきたと沖に出ていた船の証言もあります。

映像を見る限り「うねりが高い」と言う印象です。
しかし、海面はよく見えていますので、船を発見できないと言うのはやはり嫌な感じです。

天気予報では、強風・波浪注意報となっており、波の高さとしては2m前後だったと推測します。
ただし、知床岬は人が住んでいないので観測としては不十分なところでもあり、ウトロ港から知床岬に向かえば向かうほど、波が高くなると言う傾向もあります。
よって、現地での判断が重要なのですが、波が高く、ウトロ港などの漁船などは多くは午前中に帰港していたようです。
ただし、漁船と観光船は船の大きさや用途も異なります。もちろん漁船も小さいのから大きいのまで多種多様です。
喫水の低い漁船が活動できない状況だから、観光船も同じだとは一概に言えない部分もありますので、誤解が無いようにお願いしたいと存じます。
事故が分かったあと、ウトロの小さな漁船は、すぐ救助に行けないと言う判断をしていますので、波が高かったと言うのは事実でしょう。
しかし、大きな船の海保は船を出しているように、全部の船に同じ条件が適用される事ではないため、判断するのは個々の船長の役目です。
航空機でも、飛ばすかどうかは、機長が判断しますし、今回も波が高い状態とは言え、戻っていない漁船や遊漁船もいたとの情報もあります。
もちろん、観光船も船ごとに判断して、出航したとしても、途中で船長が判断して引き返すことが多いのが知床観光船の特徴とも言えます。
実際にこの日、午後の便は欠航となっています。
この「引き返し」の判断が遅かったのか?、故障・損傷などで引き返せなくなったのか?も、ポイントになります。

船首から浸水したと言う事は、高波を被ったのか?、海底の岩礁など、可能性は低いですがクジラに衝突して船体に穴があくことも考えられます。
しかし、もっと詳しい状況がわからないことには、事故原因は不明といったところです。

他船との合同便になることもありますので、他の船会社で予約していた方が、知床遊覧船のKAZUⅠに乗船していたと言う可能性も考えられます。
そのため、乗船されていた方が、知床遊覧船以外の他社で予約していても、実際には知床遊覧船のKAZUⅠに乗っていた可能性も考えられます。(執筆時点ではまだ状況が不明といったところ)
<注釈> その後、この会社が単独で運航していたことが判明。

よく団体ツアーなどが乗船する約500トンの大型船「知床観光船おーろらは、4月28日からの運行予定です。
ただ、大型船の場合には知床岬まではいかず、半分くらいで戻ってくるコースになります。




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このような事はあまり申し上げたくはないのですが、同じ観光船の船長もできる小型船舶1級を所有している者としてあえて記載させて頂きますこと、お許し願います。

報道に語弊があるように感じますが、全員「救命胴衣」を着用して乗船していたと言うのは下記のような状況になるかと推測致します。
法律では、窓があるような船室内(キャビン)では、救命胴衣の着用義務はありません。
逆に狭い座席で救命胴衣をしていたら、緊急時に船外に脱出もしにくくなります。
ただし、何か異常が発生した場合など、船長の指示で船内にいても救命胴衣つけることがあります。
なお、船外(デッキ)に出たり、デッキにいたるする場合には、救命胴衣をつけていなくはいけません。
ただし、この日は外気温が4℃、海上では更な寒く感じますので、ほとんどの方が船室内にいたと推測致します。

<新たな情報> 前の方から沈み始め、後ろが浮いていてた言う事で、2階のデッキに避難しているという無線の連絡があったらしいとも。(未確認情報)
<津更に追記> 引き揚げた沈没船の船内を5月28日に捜索したが行方不明者は見つからなかった。

いずれにせよ、事故と言う状況になってから、救命胴衣を着用した可能性があります。
しかし、海難事故を起こせば、それは船長の責任となります。(適切に船を管理していたか?などは所有者である会社の責任)

2021年の事故と修理状況

<追記> 気になる情報として、知床遊覧船は他4社より早くスタートし、遭難した4月23日が今年の最初の運航だったとの事。となると、そもそも船体・エンジン・排水に異常があった可能性も捨てきれない。

<更に追記> KAZU1は2021年6月11日、ウトロ漁港から港外に出て間もなくKAZU1が船尾を暗礁に擦る座礁事故。
自力で離礁して漁港に戻った。当時42歳の船長が業務上過失往来危険の疑いで書類送検。 → 同じ船長だったと海保が訂正。
船長は豊田氏だが、操船していたのは見らないの別の者だった。
ただし、船での責任は船長にあるため、豊田船長の名が掲載されている次第。

<更に追記> 2021年5月15日にも、KAZU1が海上で浮遊物に衝突し乗客3人が軽傷を負っていたとの事。船長は豊田船長ではない。(これは、一般的なフェリーなどでもよくある事故で、決して珍しくはないが、もし定置網などに衝突したのであれば別問題。)

事故当日、別の観光船・KAZUⅢの臨時船長の話によると下記の通り。
「よく報道などで、去年を事故を起こしたのが豊田さんだったってありますけど、去年の事故は船長の登録が豊田さんで、事故を起こした時は別の人が操縦して事故を起こしたんですけど、会員名簿が豊田さんになっていたので、船長という名目になっている」
「なので、豊田船長は2回事故を起こしたとなっているが、実際にやったのは別の人」
責任は船長にあるので豊田船長が罰せられる対象だが、操縦していたのは新米の2人だったようで、その2人は辞めている。

6月の座礁事故を受けて、2021年7月にKAZU1は造船会社で修理。
修理完了後、JCI(日本小型船舶検査機構)の検査を受けて合格。(当時の書類などはKAZU1の船中)
その後、北海道運輸局から上記2事故に関する行政指導。
北海道運輸局に改善報告書を提出。

シーズン終了後、2022年1月からはKAZU1を陸に上げて、造船会社に船の整備を依頼。
2022年4月15日、KAZU1の整備が完了し港に浮かべたあと、複数回テスト走行。

4月20日、日本小型船舶検査機構の中間検査(クルマで言う1年点検)受けて合格。(書類などはKAZU1の船中)

※のち日本小型船舶検査機構は検査にて携帯電話の通話可能か?の確認が不十分だったと認めているが、携帯が繋がったから事故を未然に防げた、全員を助けられたという事には必ずしもならない。(事故の焦点は別問題)

4月21日、KAZU1が他の運行会社3社とともに事故を想定した救助訓練(安全訓練)実施。
また、海上保安庁の定期的な安全点検が行われKAZU1の救命胴衣、船体の検査。船体の亀裂などの指摘はなかった。
このとき、海上保安庁は、事務所の無線アンテナの修理や、船に設置しているはずのGPSプロッターが外されているなどを海保が指導・指摘したとしている。
※海保は、前年2021年の座礁事故の際に、再発防止のためGPSプロッター設置を指導していた。
<注釈> GPSプロッターは、GPS信号を受信して、船の位置や船速などを計測・表示するもので、クルマで言うとカーナビに近いもの。魚探機能もあれば水深も計測・表示できるため、座礁防止のためにも知床の海では必需品と考えられる。

4月22日、KAZU1で豊田船長が他の運行会社の方とともに、海上の漂流物を確認するために安全確認の運行。
航行は知床岬までで、事故当時と同じコース。

また、船には設計段階で航行区域と言うものがあります。
クルマで言うと、山道に適したジープ、平地に適した乗用車があるように、使用する海域毎に、その海域に適した船を製造します。
このカズ・ワンは、内海用(瀬戸内海など比較的波が無いところ向け)に作られている小型船(例えば水上タクシー)のようにも見えます。
もともと外洋に適した船であったのかも気になるところです。

<追記> KAZU1(カズワン)は、35年以上前に製造された老朽船との事
<追記> 1985年進水と判明したので、船籍37年くらい。
小型船舶登録原簿が始まった2002年4月の時点では岡山県の旅客会社が所有し、瀬戸内海の日生~牛窓などを航行していた。
2004年10月、大阪の個人所有となったあと、2005年10月から知床遊覧船に回航されたようだ。
この時、改造されているようで、長さと深さが変更になっている。
ただし、カズワンよりも古い船も珍しくはなく、この船も知床で運用されて15年以上経過しているがこれまで沈没していません。
また、今の会社よりも前の会社の段階で採用されている船であることも事実です。

下記はTwitterにあった情報を公式な方法にて共有表示したもの。
写真を良く見ると、船体右舷FRPに亀裂のようなものが見える。

解雇された元従業員の説明によると「ひび」に関しては下記の通り。

船底の傷、ひび割れは毎年あって、中に入った水を抜いていた。
毎年、修理していたが、今年は間に合わず、修理せずに出航していた。
豊田船長には「今季は間に合わないから、来季、船を陸に揚げたら修理しろ」と言っていた。
毎年、水は溜まっていても、動いていたので、直接的な原因ではないかもしれない。

このように、船体が弱っていたところ、荒波でヒビが拡大して浸水したのか?は不明ですが、要因になるひとつとしては考えられます。
他にも、滝の付近で座礁したり、可能性は低いですがクジラに衝突したため、浸水した可能性もありますし、高波を受けて単純に浸水したとも考えられますが、現状としてこれは憶測しかできません。
沈没した船体を引き揚げれば、ある程度の事故原因がわかるかも知れませんが・・・。

<追記> 船の引き上げで、船底に「穴」が開いていることが確認された。
船底に穴・亀裂が開く場合のパターンとしては下記の通り。

(1)エンジン停止し、コントロールが効かなくなり流されて座礁
(2)船長の海域経験不足や操船ミス(魚探が撤去されていたため)による座礁
(3)沈没した際に海底の岩にあたり穴・亀裂が開いた

沈没原因

事故状況、沈没した原因は不明だが調査の結果少しずつ明らかになりつつある。
追加の情報も踏まえて記載する。

当初、カズワンに事故歴があることから、亀裂が入ったなど船体に問題があったとも報道されたがどうやら船体破損はなかった模様だ。
先にわかりつつあることを記載してみる。

だんだん波が高くなり、多少の浸水があったようでエンジンが停止した。(バッテリーが使えなくなると連絡)
漂流するうち、14時?頃に更に高波をかぶり前部ハッチなどが破損して船内に大量の海水が入る。
船首から傾きはじめ、更に波をかぶるなどして約20分間で沈没した。

上記の事は、乗客などからの通話記録などより割り出されたものとの事。

<追加> 沈没地点付近の海底で船首部分のハッチから外れたカバーが見つかっており、1管はハッチ部分から浸水した可能性があるとみて調べている。

ハッチに関しては、ハッチを閉じていなかったと言う事は考えにくいですが、荒波による圧力などでハッチ部分が損傷した可能性があるのかもしれない。
となると、波をかぶると海水の侵入を許してしまったと言えるが、そんな波の高い場所を航行すること自体が判断ミスと言えよう。
沈没する際に、船体内部から空気が漏れる際に、ハッチが損傷したとも考えられるが、捜査関係者がそうだと言うのであればそれなりの証拠があるのであろう。

30度傾いた際に、乗客は船内から外に逃げ出す感じになったと思われる。
しかし、この小型船ではその甲板も狭いし、荒波で振り落とされる可能性もあり。外気温も低いと言う事でかなり極まった状態であっただろう。
なかには、揺れる状況で、沈没前に海面に振り落とされた方がいたかも知れない。
すごく揺れる中、足元にはだんだん海水が迫ってくる状況は、想像を絶する恐怖だったと思う。
足元から水が浸かってくるまで、屋根の上など高い場所を求めて逃げようとするのが心情。
恐らくは全員、高いところをもとめて、デッキに上がってギリギリまで耐えていたものと推測する。
このようなことまで記載したくないが、少しずつ沈む中、波を受けるたびに、ひとり、ひとりと、投げ出され、全身を針で刺したように感じる、冷たい海に飲み込まれていったことであろう。

浸水を認めた初動にて、まだエンジンが動く段階であれば、強制的に陸上に座礁させると言う最後の手段もある。
しかし、波が高いのと断崖なども多い知床半島ですので、それも難しかったかな?と推測する。

その後、沈没船を水深20mほどまで引き上げましたが、えい航中に落として、更に深い水深182mの海底に・・・。




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4月下旬と申しますと、沖縄では海水浴ができる時期です。
しかし、気象庁の発表データによるとオホーツク海・北海道沿岸の海水温は2~3℃との事です。

大変残念な話なのですが、17度より低い海水に浸かると、低体温、そして、心臓麻痺になる可能性が出てきます。
タイタニック号の沈没では3度でした。
海面で浮いていても、寒さで、血液の温度が下がり、心臓麻痺にて、5分も生きられず、たくさんの人が命を・・・・。
海水温が5℃~10℃程度であれば、筋肉が動かない(体が動かない)状態となり、1時間前後で意識を失います。

2度と冷たい海での事故が起きないようにと願いつつ、失礼を承知で記載させて頂きます。
冷たい水に浸かると、全身が刺されたような痛みが生じます。
体温が35℃を下回ると、循環機能や生理機能が働かなくなり、おしっこが勝手に出るらしいです。
その結果、水分が失われて脱水症状も出て、内臓機能を維持しようと血管が収縮し、手・足・首は動かなくなります。
そして、意識がもうろうとし、睡魔・幻覚となります。
冬山で遭難した際に、低体温になると眠くなると言うのと同じ現象ですね。
運よく岩場に接近できても、冷水で指はかじかんで動かないため、陸に上がることが困難。

昔、この知床岬まで行くコースは、早くても6月から航行開始になっていたと記憶していますが、現在はまだ寒くて冷たい海の4月から出ていたようです。

現在の船は、そう簡単に沈まないようにできています。
そのため、船首が浸水しても船がまだ浮いていたり、充分な「救命いかだ」(救命浮器)があり、全員が海水につからないような状況であると良いのですが、いずれにしても早期発見が望まれます。
<追記> 結果的に1時間ほどは浮いていたと推測できますが、救助が向かうのには短すぎでした。

揺れて酔う方が多い中、船が傾き、凍るような冷たい水が入って来たキャビンは、パニックになったことでしょう。
特に小さなお子様と一緒だった方は、どんなに子供の生存を願ったことか・・・。

ウトロの漁協でも、海上保安部から要請があった場合には、約10隻が現場に向かえる体制を整えているとの事。
ただし、現時点では波が高いので港で待機している。




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ご家族・ご友人の方はさぞかしご心配されていることとお察し申し上げます。
全員無事に発見・救助されることをお祈り申し上げる次第です。

その後、少しずつ状況がわかってきていますが、恐らく出航時は多少風があったものの、波の状態も問題なかったと思われます。
ただし、知床岬に向えば向かうほど、うねりも高くなる海域です。
そのため、喫水が低い漁船などは天候悪化を予測して戻ってきました。
地元出身の方で何年も航行している船長は当然理解していたでしょう
しかし、その後の報道によると、船長は知床出身ではないと言います。
これは私も「予想外」でした。
小型の観光船は、ぜんぶ知床出身の漁師さんがはじめたものだと考えていました。
山のガイドで言えば、その山をあまり知らない方がガイドしているのに近い状況とも言えます。
そのためか、報道によると他の観光船業者の方が(前日の段階で)「やめた方がいいぞ」とアドバイスし、その時は「はい」と返事があったと言う証言もあります。
いずれにせよ、最終的に判断するのは船長ですので、他人の意見に必ずしも従う必要はないのですが、判断があまかった可能性が高くなってきました。
ウトロの港近辺はいつも比較的穏やかです。
しかし、出航してみると波も高くなってきます。
そして、だんだん突風が吹くようになり、その急激な天候変化も、経験不足で読み切れなかった可能性があるかも知れません。
札幌管区気象台も「しけとは言い切れないが、急に波が高くなったようだ」と発言しています。
私も、船を出すときは、何日も前から天気予報を見て変化を感じ取り、ちょっとでも危ないと感じたら、勇気をもって出すのを辞めますし、出航しても、状況が悪くなれば途中で引き返します。
ドンぶらこ状態ですと、酔う方も増えますしね。
また、昨年6月に座礁したことがあると言う事で、その修理が充分だったのか?、またエンジンの調子も悪くなかったのか?が、気になるところです。

今後更に状況がわかってくるかも知れませんので、新しいことがわかりましたら、追記致します。

続報

翌日早朝、通報現場から14キロ離れた知床岬の先端で北海道警察のヘリコプターが午前5時5分(5時1分とも)、海上に浮かんでいた3人を救助。
海保のヘリが5時45分頃、知床岬先端の岩場付近で1人を救助。
いずれもまだ容体などは不明。
<追記> 搬送時は意識がない。
カシュニの滝からだいぶロシア側に流されている模様。
午前6時ごろ、捜索の依頼を受けたウトロの港の漁船約0隻などが次々と出港。
ヘリコプター約10機、船約20隻による捜索になっている。

<追記> 午前9時51分に、航空自衛隊が岬先端付近の海上にてさらに3人を発見も意識不明。(河口さんなど)
<追記> さらに2人を救助したが詳しい状況は不明。(9名に)

9名中4名は救命胴衣を装着していない状態で発見された模様。(荒波などでとれてしまったか?)

<追記> 海上自衛隊ヘリが10人目発見、時刻不明・容体不明・発見場所不明

<追記> 24日21時頃、国後島との国境に近い海上(岬から14.5km沖)で、夜間もサーチライトを照らし捜索にあたっていた漁業取締船・海王丸(乗組員6名)が子供1名(3歳女児)を発見。
この海王丸では白波が立つなかでの救助が不可能だったため、約2時間追跡し駆けつけた海保の巡視船が夜11時頃に救助した。
一部の巡視船は音波探知機(ソナー)で沈没船の特定を試みている。

3歳の女の子は両親と家族3人で乗船していたとみられ、両親はまだ見つかっていない。

死亡確認になったのは大人の男性7名、大人の女性3名、子供1名。残念です。とても残念です。

<注釈> ロシアとは救難救助の協定があるため、ロシアの許可は得やすい。(ただし、ロシア側は原則として捜索に参加はしない)

<追記> 26日昼頃、カシュニの滝近くの沖合で、巡視船のソナーに船体らしきものが映ったため、水深30メートルほどの場所にダイバーを潜らせるとの事。 → 天候悪化のため中断。
※別の報道では、漁船の魚群探知機に影が映ったので潜水して調査とある。総合すると、先に漁船の魚探で発見したようで、海保に知らせて巡視船が到着し、改めてソナーで確認してダイバーを出したと言う事らしい。
※関係者の証言によると、確認が行われたが、船ではなく岩だったとも。(その後、岩礁だったと確定)

27日午後1時すぎ、ロシアの警備艇が国後島の西にて救命胴衣を付けた漂流者を発見するが、荒天で救助出来ず見失う。

<追記> 4月28日午後4時30分、知床岬灯台から南南東方向23.9キロメートル付近の海域で、海上自衛隊が救命胴衣をつけていた2人発見。
もう1人、28日午後6時13分、知床岬・南南東方向に23.0キロメートル付近の海域で海上保安庁の巡視船が救命胴衣をつけていた1人を発見。
ギリギリ国境(日本の立場としては中間地点)に近い海域で、この3人はかなり流されている。

29日、カシュニの滝付近の海域水深120mで海上自衛隊の掃海艇「いずしま」が水中カメラでKAZU1の船体を確認。(沈没が確定)

5月6日、国後島にて若い日本人女性の遺体を発見。(体の一部は白骨化している)
5月19日、国後島にて日本語の身分証明書(甲板員の男性と考えられる)を所有する男性遺体を発見。(体の一部は白骨化している)

6月23日、ロシアにデータを提出しDNA型鑑定が進められたが、2名は行方不明となっている乗船者のデータと一致と報道。
この2人は、甲板員の曽山聖さんと、乗客の北海道北見市の20代女性(プロポーズ相手の女性)。

6月28日、サハリン島南部で新たに遺体を発見。(ロシア領では3人目)。
遺体は男性とみられ「KAZU」と記載された救命胴衣を着用している。
所持品は携帯電話・腕時計・車の鍵など。
今後、DNA鑑定などが進められるとみられるが、北西のサハリン島(樺太)で発見されたと言うのは正直驚きだ。

8月13日早朝、北海道南部の知内町中ノ川の「中の川漁港」から北へ500メートルほどの海岸で、かなり腐敗がすすんだ遺体発見。着衣はズボンだけ。
※関係が無いかも知れないが念のため記載しておく。

8月14日、行方不明者の捜索を行っていた羅臼町の漁業者らが、文吉港近くにある啓吉湾の海岸線上で、頭蓋骨のほかジーンズや女性用の下着、スニーカー、ジャンパーなどを発見。
その後、骨3点が行方不明乗客のDNA型が一致とのこと。
ただし、遺族の意向で年代・性別などは非公表との事。(のち東京都葛飾区の女性36歳と追加発表)

8月18日、午前8時30分ごろ、文吉湾周辺の海面を捜索していた機動救難士が、骨のようなも13個を発見。
また、海面の捜索にて手提げ型の黒いバッグを発見。(まだ行方不明者のものかは不明)
<注釈> 10月12日になって、13点見つかった骨のうち、DNA型鑑定で11点が大阪市の乗客(男性、当時46歳)と判明したと発表。ただし、遺族の了承が得られていないとして、男性の氏名を公表していない。

8月28日、サハリン南西部のトマリ地区の沿岸で日本人の男性(高齢・160cm)とみられる遺体が発見された。

9月5日、十勝港の約13キロ沖合で男性の遺体が浮いているのを、近くにいた漁師が発見。
遺体は一部が白骨化していて、年齢が60代くらい、身長が約175cmの中肉。着衣や所持品はなし。
※関係が無いかも知れないが念のため記載しておく。

9月10日、サハリンから観光船事故の乗客2人、乗員1人と見られる3遺体を巡視船「つがる」にて小樽港に到着。
乗員の曽山聖(あきら)さん、北見市の21歳の女性、サハリンで見つかった北見市に単身赴任中だった江別市の59歳の男性とDNAが一致している。
※旭川医科大学でDNA鑑定

9月17日午前11時30分頃、沈没現場から北東に約12キロ離れた知床半島先端の啓吉湾付近、啓吉湾から約200メートル離れた小さな入り江を捜索をしていたボランティア地元の漁師4名が遺体を発見。
頭部が白骨化している遺体はうつぶせで倒れている状態で、骨格から男性とみられ、上半身は服を着ておらず、下半身は黒っぽい半ズボンを履いていた。
<注釈> DNA鑑定の結果、のち船長・豊田徳幸さん(当時54歳)と判明。

これで、死亡が確認されたのは19人、行方不明者は7人となった。

また、午前10時すぎには文吉湾付近2カ所で、人の骨盤の可能性がある骨片など2点も見つけた。(船長とは別人とみられる)
まだ捜索していなかった約1kmの区間だったとのこと。

海上保安庁と北海道警は9月21日~23日までの3日間に集中捜索。
カシュニの滝付近の北側を海保が、南側を道警が担当。
海上保安庁が9月21日に人の骨のようなものを7個、道警が小銭入れや運動靴、防寒靴などを発見。
<注釈> この7点の骨片は全て動物のものとのちに判明
道警は9月23日、ルシャ湾周辺をハンターとともに警察官15人態勢で捜索し「人の骨のようなもの」3個を発見。

行方不明者家族の意向があり冬も捜索を継続するとの事。

10月4日、知床岬周辺で第1管区海上保安本部(小樽)の潜水士らが海の中を捜索した際、人骨とみられる骨15個のほか、沈没事故の行方不明者の名前がカタカナで書かれた交通系ICカードが見つかった。

10月9日、知床岬・啓吉湾沿岸の洞窟内を捜索した地元のボランティアが骨を13個見つけたと発表あり。(ヒグマの骨の可能性もある)

10月21日、海上保安庁と北海道警が合同で3日間知床半島の捜索を行い、合わせて3個の人のものとみられる骨のようなものを発見。
10月22日は、13個発見。




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2023年8月27日、知床半島の文吉港近くの洞窟で新たにリュックサック1つ発見。
中には何も入っていない。
第1管区海上保安本部が乗客家族に画像を送り確認をとっている。
現在も6人が行方不明

この記事では、海水温が低いことから、沈没した場合、当初から生存は難しい旨を記載しておりました。
なお、状況などに関しては報道や発表をそのまま掲載しておりますが「救助」した言う言葉は、生きている?と誤解を生みやすいと感じます。
ニュースや新聞報道を見て、なかには「助かったんだ」と感じた方もおられたことでしょう。
日本語のあやふやな部分でもありますが「発見」もしくは「意識不明で救助」で良いのではとつくづく思います。

条件付き運航

観光船の会社は「安全管理規程」を策定して、国土交通省の運輸局に届出する義務があります。
そして、その安全管理規程にも照らし合わせ、毎回、出航するかどうか?の判断を船長が行います。
簡単に言いますと、運航会社が安全上のルールとして安全管理規程がありますので、そのルールに適さない海上条件だった場合には、船長が大丈夫と思っても出航できないと言う事になります。

知床遊覧船の運行管理規定の内容が気になるところでする
桂田精一社長は「波が1メートル以上で欠航、風速8メートル以上で欠航、視界が300メートル以上ないと出航できない」と1度述べましたが、その後は「1メートル、8メートル、300メートルというのは、安全管理規程には書いていない。」と話しており、この執筆時点(追記時点)で正確な数字はまだ不明といったところです。

もし、波1m、風速8mと言う上限があった場合、朝10時の出航時点で、ウトロ港付近は問題なかったと推測致します。
今回は、途中で波が高くなったと言えるのですが、それも事前に「予測」はできていたと考えられます。
ただし、あくまでも予測であり、気象現象ですので、予想通りになるとは限りません。
でも予想はされるため「条件付出航」と言う方法を取ったと言う事になります。

この条件付出航と言うのは、船長の判断でコースの途中で引き換えることがあると言うことになります。
航空機でも飛び立って、数時間後に到着する目的地空港の「悪天候など」が予想される場合には「条件付き運航」と言う形で、出発はします。
その後、機長が目的地に着陸するか?、出発地に引き返すか?、他空港への臨時着陸など実際に現地の状況で判断する訳です。

知床の場合も、ウトロ港付近は波が穏やかなのですが、先に進めば進むほど、波が高くなる傾向があります。
1時間30分後の状況を正確に事前に察知するのは困難ですが、知床岬付近の天候が悪化する予想をしていたので、条件付き出航をしたと言う事になるでしょう。
条件付であれば、船長がどうして途中で引き返すタイミングを逸してしまったか?
操船技術はあっても、知床の海を知り尽くしていない(海域や気象に関しての知識・経験が乏しかった)としか、言いようがありません。

<追記> 事務所スタッフの証言によると、会社としては条件付出航だったが、乗客には条件付とは説明していなかったとも。

国交省は、安全管理規程のルール上「荒れるおそれがある場合は出航できない」とし「“条件付き運航”という考え方はない」と強調していますが、これは単に責任逃れのような気が致します。
もう10年以上、知床では条件付出航をしている訳ですし、日本全国、条件付は普通に行われていますので、もし実態を把握していなかったのであれば、行政としての責任は重いと推測致します。
もちろん、条件付は、知床に限ったことではなく、沖縄から北海道まで、フェリー会社・定期航路も含めて普通に行われています。

船に限らず、航空会社も「条件付き運航」として出発して「機長」の判断で戻ってくることもあります。
カーフェリーでも朝は穏やかなので出航しますが、気象が変化すれば途中から欠航や引き返すなどの判断を「船長」が行います。
奄美大島方面など離島は条件付き運航は「普通」にありますので、国交省が知らないわけありません。
JRの長距離・特急も「途中で運転取りやめするかも?」と条件付きで出発することもあります。

要は、条件付は法的にも「なあなあ」な部分だったと存じますが、もし、条件付がダメと言う話になったら、多くの船舶会社や航空会社など交通機関は困ることになる可能性があります。
今後、もし、船が条件付き運航ダメと言う話になったら、航空会社も条件付き運航ダメにしないと、つじつまも合わなくなります。

知床は、北海道の中でも非常に遠い地の果てです。
そのため、気軽に旅行すると言っても、そうそう行ける場所でもありませんので、観光客も楽しみにして訪れます。
そのような思いにも答えるため、条件付と言う、臨時に短縮するコースにするかも知れないと言う出航を長年行っていました。
この条件付は、他の4社も同様に行っているのですが、今回、他社はまだ運航開始していない季節でした。
もちろん、4月・5月は海が荒れることが多いから、まだ開店していないと言う理由もあるのです。
そのため、今回、船長は特に慎重に、いつもよりも早めに引き返すと言う判断をするべきでしたが、その経験が乏しかったと言う事になるでしょう。




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北の海での約3時間の行程にて、出航場所とその途中経路、目的地と天候が全く同じと言う事はまずあり得ません。

観光バスでも、都会を出発したときは問題なくても、途中から大雪になったなど、天候に変化があれば、運転手の判断で「引き返し」たり、安全策をとらないといけません。
そのまま進んでいいと言う話ではないのは常識とも言えます。
船も飛行機も同様でして、機長や船長が、その場の状況に応じて適切に判断する必要があります。




乗船者情報

第1管区海上保安本部の発表にて、新たに乗船者の名前などもわかってきましたので、追記させて頂きます。

船長・豊田徳幸さん54歳 ※斜里町
甲板員・曽山聖さん27歳 ※東京・調布市
佐賀県有田町の男性75歳ら3人が乗船している可能性ありとの事。(ご家族が心配して海上保安庁に問い合わせしたところ、観光船の乗客名簿に名前が載っていると伝えられたという。)

その他、9都道府県からの乗船があり、なかには彼女の誕生日なのでサプライズのプレゼントに(プロポーズするため指輪も購入)とカップルで乗船された鈴木智也さんもいるとの報道あり。
<追記> 両家のご家族は話し合い、2人が暮らすはずだった街の役所に「婚姻届」を出しに行った。役場で受理されることはなくても「せめて形を残してあげたい」との思いだったと言う。

豊田徳幸船長は埼玉県出身で、2013年~2018年、長崎県・島原ダックツアーにて水陸両用車のドライバーを務めていた。(外洋の経験は乏しいか?)
埼玉県に自宅があり知床には2年ほど前から単身で赴任し、約6ヶ月間、甲板員を務めた後、2021年から船長を任されていた。
今年3月に投稿したFacebookによると「ブラック企業で右往左往」と記載している。
曽山聖甲板員は、今年から知床に来て勤務開始したばかりとの事。

亡くなった方の死因は全員が「水死」。
<注釈> 救命胴衣で浮いていて呼吸できていても、低体温で亡くなると水死に区分されるとの事。また、救命胴衣をしていても低体温になると体を動かせなくなるため、顔を水面に出しておくことが困難になることもあり、波があればなおさら溺れることもある。

身元判明者

報道などの発表に基づく身元判明者、亡くなった方のお名前は下記のとおりです。
謹んで心よりお悔やみを申し上げます。

※順不同

河口洋介さん(かわぐち-ようすけ、40歳)香川県丸亀市
橳島優さん(ぬでしま-ゆう、34歳)千葉県松戸市
加藤直幹さん(35歳)東京都葛飾区
加藤七菜子さん (かとう-ななこ、3歳) 東京都葛飾区
小池駿介さん(28歳)会津若松市
林善也さん(78歳)佐賀県有田町
岩永健介さん(74歳)佐賀県有田町
瀬川由美さん(51歳)岐阜県多治見市
竹川好信さん(66歳)兵庫県小野市
竹川生子(せいこ)さん (62歳) 兵庫県小野市
竹川有哉さん(33歳)東京都北区
鈴木智也さん(すずき-ともや、22歳)北海道北見市
米田美佳さん(よねだ-みか、43歳) 大阪府大阪市
伊藤嘉通さん(よしみち、51歳) 福岡県筑後市

※国後島で発見された甲板員の曽山聖さんと、乗客の北海道北見市の20代女性(プロポーズ相手の女性)は、まだ正式に発表とはなっていない。

小池さんは、福島を中心としたスーパー「リオン・ドール」小池信介社長の長男で北海道に出張中だった。
週末に時間ができたため、良い機会と知床まで足を伸ばし、今回の事故に遭遇。
知床岬から西の沖合1.1kmにて救命胴衣を着用していない状態で発見されていた。

続報は、わかりましたら追記致します。




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私も知床には5回ほど訪問して、500トンの大型船ばかりですが5回ほど乗船チャレンジ(うち1回は欠航、うち1回は途中引き返し)したことがございます。
そのうえで、小型観光船(20トン以下)は世界遺産になったころから小さな会社がいくつかできました。
小さい会社ですので、船長は地元の漁師さんであり、船長さんが社長も兼務しているのかな?と考えていましたが、この事故を起こした会社はそうではなかったようです。
また、海保から指導を受けてもいますが、無線アンテナが使えない、GPSブロッターを搭載していないなど、とても乗客を乗せて安全に運行できる体制ではなかったことも、少しずつあきらかになってきました。
追加購入・修理などするお金を出し渋って、会社は安全を軽視したと言われても仕方ないところです。
海の怖さが理解できていないと申しましょうか?、お金が無いのであれば、安全を重視して廃業または、設備が整うまで営業停止するべきだったと存じます。
なおかつ、座礁してた船を、勝利したとはいえ、そのまま使用していると言うのには驚きです。
小型船舶1級を所有している私でも操船したくないです。
完璧に修理したからと言われても、とてもお客さんを乗せて航行などしたくありません。
責任を取らされるのは船長ですのでね・・・。

もちろん、他社と同じように、無線やGPSもきちんと整備していれば、沈没しなかったと言う事ではないのですが、そんな必要な装備の重要性も認識できていないのであれば、利用者の命を預かっていると言う安全面に対する意識が非常に低かったと言えるのです。

老朽船だった?

日にちがたつにつれて色々と船の状態もわかってきたが、製造から37年以上たつ「老朽船」だった。
また、瀬戸内海など波がほとんどない「内海用」の船であったと言えよう。
そのため、荒波のオホーツク海での運用には無理があったとも考えられるが、現行の法律的には問題ない。
ただし、前の社長が500万円で購入し、3ヶ月かけて太平洋沿岸を航行し、カズワンが2005年10月から知床にきて15年以上は安全航行できていたのも事実。
これは昔の船長が、海域の特徴をよく理解し、船の特徴からも、欠航や条件付き運航を適切に判断していたため、事故にはならなかったとも言える。
また、てっきりエンジンが船内の後方にあるものだと思い込んでいたが、エンジンの場所は前方とのこと。(前方にエンジンがあるなんて初めて聞いた)
事故には関係がないが、瀬戸内海を航行していたころは、もともとエンジンは2機あったそうで、スクリューなどの故障があり、エンジン1機に換装したとのこと。
修理後の検査は受けていると思われるため、この改造事態は沈没原因に繋がるとは考えにくい。
ただし、エンジンが前に設置されている設計は珍しい。
そのため、船首が下がり気味だったようだ。
でも、波がない水面を航行するのであれば、船首が若干下がっているくらいの方がスピードが出る。
これはラジコンの船でも同じことが言える。
しかし、知床は外洋。
そのため、船尾に約1.5トンの重しを乗せていたとの証言もある。
※沈没時にその重りがどうなっていたのかは、まだ不明。

元従業員によるとエンジンがある場所には、人が行き来できるよう直径80cmほどの丸い穴があったとの証言がある。
そのため、危ないから、穴を鉄板で塞ごうか?なんて話も昔に出ていたようだが、そのまま長年使われた模様。
ただし、これも法律的には問題ないのだが、専門家と称する方や、海上保安庁の方も沈没原因だとコメントすることがある。
警察が車検に詳しくないのと同じで、取り締まりが仕事の海保の方も船舶の構造や法律面は詳しくないと言える。

しかし、これらの証言などから、船体に穴が開いたり、亀裂が生じて前方から浸水すると、やがてエンジンは水に浸かり、穴から後方にも水が入っていき、やがて沈没したとも考えられるは事実。
でも、カズワンでなくても、他の船でも同様の可能性があると言う事だ。

そもそも浸水したのは、高波を受けて、デッキから海水が船底へと入ってしまったのか?
ある程度の浸水は、24時間動かしているビルジポンプで常時排水できるのだが、そのポンプが正常稼働していたのか?も気になる。(バッテリー消耗を防ぐため、止めていたかもと言うとんでもない証言もある。)
ただ、沈没するにも最初の通報と最後の通報の時間から、約1時間は浮いていたわけなので、かなりゆっくりと浸水していったことがわかる。
船長が浸水に早く気が付けば、エンジンが動いているあいだに、岸に強制接岸させたり、港に戻ることもできたかも知れない。

私も船の免許を所有しているため、このようなことは申し上げたくないのだが、最終的には船長の判断ミスと言える。
船の状態把握、海域の状況、天候の予測など、あまりにも対応がズサンだったと言える。
仮に船の状態が完ぺきでは無かった場合には、社長が行けと言っても、どんな理由があろうとも出航してはならないのである。

2度と死者を出さないために

ニュースのコメントなどを拝見しておりますと、あまりにも海をよくご存じではない無知なご意見もあり、的外れであり実情を理解されていない内容が散見致しておりますが、それをまた「支持」している方も多いため、とても残念に感じております。
海上は皆様が想像する以上に怖いところです。
立派な無線装置を導入していても、事故は起きます。
ドコモ回線であっても通信障害があったり、無線機やスマホも突然故障すると言う事もありますので、そもそも緊急通報体制を100%万全にすると言うのは必ずしも意味を成しません。
むしろ、今回は、無線や携帯から通報・連絡じたいはできています。
強風の中、海保の航空機が現場に到着するまで3時間ほど時間を要していますので、通報がスムーズであっても沈没迄には間に合わなかった可能性が高いです。
もちろん、連絡できずに沈没した訳ではありませんので、無線不備がニュースなどで取り上げられることじたい、あまり意味がありません。
すなわち、問題点としては、どんなに注意していても事故は起きますので、事故が起きてしまった場合の船の装備に関して一番議論すべきところです。

免許制度は、そもそも船長用の免許ですので、陸上でのバス2種免許に相当し、旅客船用の講習も受けないと旅客はできませんので、今の免許制度がおかしいとも言えません。
世界的に見ても、船の操縦免許に関しては日本は厳しいくらいです。
外国では小型船の場合、操縦免許が不要な国もあります。
現に航空機でも事故はありますし、免許が厳しい観光バスでも事故は発生しています。
よって、一概に新たな免許制度を設けたり、資格面をより厳しくしたから、事故が起きないと言う事ではないと存じます。

どうしても免許面を厳しくするのであれば、観光船の会社を経営でき、役員になれる者は、小型船舶1級の免許取得者でないといけないと定めると、少しは海の知識が会社に入ると考えます。

条件付で出発するのは、旅客機でも現地の天候次第では着陸で隻無いと条件付きで出ることもあり、JRの長距離特急でも積雪により途中で運休になるかも?と条件付きで出すことがあります。
ただし、海の場合、陸上を移動するよりも、何倍も安全に気配りし、船長がその状況に応じて適切に判断する必要があります。
今回の事故では、船体に不備があった可能性も考えられますが、一番の問題は船長が「引き返す」と言う部分で無理をしてしまった可能性もあります。
その「安全」に対する意識がとても重要なのです。
仮に船体に問題があった場合には、当然、出航してはいけませんし、波が高くなければ酔う方も多くなりますので、その時点で戻ると言う判断がなぜできなかったのか?、船の免許を持つ私が一番疑問に感じるところです。

日本は季節があり、沖縄では海水浴できる時期でも、オホーツク海は冷たい。
更に国境に近いところは、どうしても救助の到着に時間がかかる。
事故は当然、悪天候の場合に発生することが多い。
ただし、波が穏やかで今日は安全だと船長が判断したとしても、海域に未熟で座礁したり、他船と衝突すると言う事もある。
海は危険だからと言う話になってしまうと、風や波がなくて出航しない(乗らない)と言うのが最善策となってしまう。

今回の事故では、衛星電話の不備と言う事もかさなっていますが、それらの設備があっても事故が防げたか?は大いに疑問が残ります。
最初の救助隊航空機が現地に到着したのも通報から3時間後となる、いわゆる「へき地」です。(強風もあり到着に時間を要した)
3時間の観光コースですから、出航してすぐに事故となり、携帯や無線で通報などできても、時間的には厳しかった訳です。

ただし、操縦以外の部分(無線資格、安全装備など)は、日本よりも厳しいところもあったりします。
今回の事故を受けて「罰則」が強化されることになると予測致しますが、いくら罰則を強化しても、乗り物で移動する以上、事故がゼロになる訳でありません。

よって、事故を未然に防ぐと言う事はとても重要なのですが、どんなに事前対策を講じても、移動する以上、事故はつきものです。
ところが、報道によると知床遊覧船の社長は、荒れた海への出港判断について、私はいけると「思った」と述べたとあります。
これには非常に驚きです。
桂田精一社長は「知床小型船協議会」の会長も務めていたと言います。(出航時も会長だった模様)
社長が「思った」と言う事は出航の可否を船長に任せていなかった?、出航に関して利益を追求する社長(会社)の意思が優先されていた可能性も考えられます。
船長に任せているとの発言でないことに驚きました。
更にこの「思った」と言うのはダメなんですよね。
問題無いと確信していたと言う事であれば、きちんと判断する作業を行っていたと言えます。
しかし、クルマの運転でもそうですが、信号が赤に変わる際に、通過しても大丈夫だと「思った」と言うのは、思っただけで確実性がないのです。
確実に「いける」「いけない」を判断する必要があるのです。
よって、大丈夫だろう・思ったと言うのは確実性がありませんので、交通機関によっては「禁句」にしている会社もあります。
行けると思ったと言う事は、裏を返せば「ダメかも」と確信は無かったと言う事ですので、大丈夫と思っただけでは出航をするべきではありませんでした。

その後の調べで、安全運航のため船長と事務所にいる運行管理者の間で取り交わす、ルート途中の定点連絡を怠っていたことが判明。
更には、規程上、運航管理者も務める社長が事務所で勤務する必要があったが、当日は不在だったとの事。
すなわち何かあった場合に対処する体制が取られていなかったという事で、この2つの違反は、日頃より常態化していた可能性も考えられます。
それでも、検査は通過していますし、観光船の業者として認められていました。
会社の責任は当然重いのですが、どんなに注意していても事故はつきものであるため、根本的な要因はここではありません。

ちなみに、桂田精一社長の父は、知床で民宿を営み、斜里町の町議も4期務めていた。
そして、桂田精一社長は陶芸家になっていたが、約17年前の2015年4月から実家の民宿を継ぐ形で知床に戻り事業を拡大。
「しれとこ村」など5軒ほどの旅館も経営。
他にも加工品製造会社、土産物販売店、食堂、道の駅、ネットショップなど多角経営。
全国の経営者でつくる経営研究会の会員のようで、経営コンサルタントのアドバイスを受けて旅館を買収したとも雑誌に掲載されているようだ。
観光船会社が売りに出された際にも「値切らず買取なさい」と言う助言を受け約4000万円で購入したとある。

知床遊覧船の売上としては、2019年までは年間5500万円程度で、2020年・2021年は4000万円程度と推測されているとのこと。
<感想> 私も経営者のはしくれですので、経営者の立場から申し上げれば、従業員ひとり年間400万円給料だと考えると、人数もそんなに雇えない(経営が厳しい)ような・・・。

保険適用

観光船の強制加入保険は船客傷害賠償責任保険がありますが、たまたま2022年から掛け金が高い保険に入っていたと言う情報もあります。(ひとり最大1億円の保険の模様)
ただし、ひとり最大1億円の保険は一般的とも言えます。
逆に1億円以下の保険しかかけていない運行会社だったら本当にヤバイと言う気が致します。

過去の判例などからも、何度も申し上げますが、船の事故は船長の責任です。
よっては船舶事故では、船上での責任者である船長が責任を負います。
ただし、乗船券を販売したと言う商法では話が別でして、船舶所有者も共同賠償責任を問われます。

今回、カズ・ワンの豊田徳幸船長は行方不明のままのため、豊田船長の家族が賠償を追います。
しかし、ご家族が船長の相続権を放棄した場合、家族に賠償責任はなくなると考えられ、その場合、運航会社が賠償責任を負うことになると思われます。
行方不明の乗客も、約3カ月以上経過すると死亡認定となり、死亡保険金の支払い対象になります。

なお、埼玉県にある豊田船長の家族が住む自宅に、テレビや新聞などマスコミの記者がたんさん駆けつけているそうです。
当然、野次馬も集まっており、なかには玄関ドアを蹴飛ばしたり、罵声を浴びせている人もいると言います。
責任が船長にあるのは言うまでもありませんが、船長のご家族に事故責任はありません。
ご家族としても、一家の主を失った訳ですので、被害者のひとりと言え、悲しい思いで過ごしていると存じます。
抗議なさる方のお気持ちはわかりますが、ご家族に当たるのは異常な事態と言えます。
ご自宅におしかけるなどもっての他ですので、直ちにやめて頂きたいと存じます。




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以上、今回の事故で、まっさきに感じたのは、救命備品が冷たい海と言う「実情」に則していないと言う事です。
今後、安心して日本各地の観光船に乗船できるためにも、まずは万が一のための「備え」を充実させるような必要性を感じます。
船舶の救難設備も日本全国同じ基準だと生存に不十分な場合があるため、地域ごとに細かく設定できると良いのではないでしょうか?
沖縄でも北海道でも救命胴衣(ライフジャケット)だけでは、助かる命も地域・季節・天候によって差がでてしまうと言う事です。
救命浮具はあったようですが、平べったいもので大きくもありません。

例えば、北海道であれば冷たい海に対応するため、漁船も観光船も関係なく、人数分の救命胴衣以外に「自動膨張式の屋根付き救命いかだ(ゴムボート)」を定員以上の搭載義務化するなど、冷たい海水に浸からなくて済む対策(法整備)が必要かも知れません。
荒波だと乗り移るのが困難ですが、救命いかだは転覆しにくいですし、あれば何名かは助かった可能性があります。
ついでに、遭難信号自動発信器(ResQLink)もあると良いと思われますが、日本だと無線局の開設申請が必要などちょっとややっこしいのが実情です。
ただし、安全装備に関しての法律が施行されたあとに、優れたものが開発されたりもしているため、安全対策が現状に追い付いていない(更新されていない)と言う印象も受けます。
危機管理とは、常に最悪を想定して行うものだと存じます。
運行会社も、設備投資が必要な事から、法律が定めている以上の安全対策を取らないところが多いですので、せめて「自動膨張式の屋根付き救命いかだ(ゴムボート)」だけでも義務化して頂きたいところです。
とは言え、もし、65名定員に屋根付きボートを搭載すると11台程度は必要なため、設置できるか?と言う現実的な問題もあります。

設置が困難であれば、エアーパックを船の左右前後に搭載して、水に浸ると自動で膨張して浮力となり、船の沈没を防げるような装置が良いかも知れません。

しかし、事故が起きてしまった場合の対策としては上記くらいしかないのも現実です。
一番良いのは事故を未然に防ぐと言うことですので、所長や船長もその海域に詳しくない人がいると言う場合には、運航会社は事故を起こさないための対策強化が求められると言う事になります。

今回の事故は、会社も船長も、操船技術などはあっても、外洋である知床の海に対しての経験・知識が不十分だったとも考えられます。
会社側もその安全教育を怠っていた可能性も出てきています。
また、船が過去に事故を起こしていたと言う、この「3点」が注目するべき事項となります。
この3点を踏まえて、事故を発生させないと言う観点からは、下記のような追加対策があると良いかと存じます。

(1) 漁協などの助言をもらいながら「自治体」が小型観光船の出航可否を判断 → 船の会社や船長に従わせる
※外国では採用している観光地もあるが、日本の行政は責任を取りたくないので実現が難しいかも

(2) 衝突事故・機関故障が発生した船舶の「事故歴」をホームページなどに随時更新して掲載(公表)することを義務付ける (利用者が確認できる)

会社単位にすると、事故を起こした会社を清算して、新会社にしてしまえば事故歴ゼロとなってしまいます。
よって遊漁船・観光船などは「船体」単位で事故歴・修理歴・船籍歴の公表義務があると良いかと思います。
船長に関しては、勤務で労働時間や休暇もありますので、毎日、毎時間、同じ船長になるとは限りません。
また、今回のように、船の操船は経験豊富で技術はベテランでも、浅瀬や岩礁の場所・気象など、その海域には素人・未熟な雇われ船長もいるわけですので、出航する/しないを、行政などが決めるしかないと存じます。
これらの対策くらいが追加されないと、知床の他4社も心配で乗船できなくなってしまい、観光客が減り、ホテルや交通機関、飲食店など観光地全体が打撃を受けます。
どうせ対策をするのであれば、日本全国のダイビング船・釣り船なども含めて、乗客がいる小型船すべてに適用できると良いかと存じます。

(3) 運営会社の社長・役員を専門家にする

極端な話ですよ、山岳ツアーガイドでも、無理をして案内すれば事故が発生すると言う事です。
専門的なところには、精通した人が置かれないといけないと思うのですが、今回は会社社長も船長も海域のプロではありませんでした。
よって、船長の教育だけでなく、社長や会社を運営する者も、どうしたら安全が保たれるのか?の知識が無いといけないと感じました。
船会社の社長や運行管理者には、資格に合格しないと観光船を運航できないというような資格制度も良いかも知れません。
この場合は、小さな会社だと無知な社長の意向が通ってしまうことがあるため、絶対に社長も同様の資格取得を義務付けないと意味が薄くなってしまうと存じます。

日本全国にある多くの観光船業者は、しっかり管理しているところのほうが、当然ながら多いです。
よって、知床で沈没したから、他の観光船に乗らないと言う事はあってはなりません。
そこは、誤解のない様にお願いしたいと存じます。
乗る側もその会社が大丈夫なのか?、きちんと事前に調査・判断することが重要です。




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国土交通省の追加安全対策としては、不定期航路を運航する小型旅客船を念頭に、ドライブレコーダーの搭載を義務付ける方針とのこと。
小規模観光船「届け出制」を事業取り消し可能な「登録制」する方針。
乗船者名簿を義務付ける旅客船の範囲を拡大する方針。
※カズワンは事故当時、乗船者名簿を作成していたが、法令ではカズワンのような港から往復2時間以内の「限定沿海区域」を航行する船は、義務化の対象外だった。




運輸安全委員会が公表した経過報告書

運輸安全委員会が公表した経過報告書によると事故原因は下記の通り。

ウトロ出航時の波高は0.2m。
しかし徐々に波は高くなっていき、知床岬折り返し時には約1m。
沈没時は2.3m前後の波の高さになっていたと考えられるとの事。

GPSの記録などから往路はほぼ予定通り(約7分遅れ)で午前11時47分ごろに折り返し地点の知床岬に到達したことがわかった。
往路の速力は平均17ノットだったが、GPSの記録によると向きを変えた復路で速度が約7ノットへと大幅に低下。
知床岬沖からカシュニの滝沖まで約30分のところ、この日は約1時間もかかっている。
最後は浸水が大きくなったのか、速力が3ノット程度まで落ちていた。

報告書によると、沈没の原因となったのハ「カズワン」前方・船首部分の甲板にある約50cm四方のハッチとの事。
甲板は水面から96cm高さがあったが、フタが完全に閉まってなく高波によって海水が入り込み、浸水が始まったとみられる。
このハッチは操舵室から死角で見えず、フタが開いたことに船長も気が付かなかったと見られる。
カズワンのハッチのふたは四つの固定具(クリップ)をレバーで回し、船体側に密着させて閉鎖する仕組み。
船体側の留め金のうち2カ所で上部に摩耗が見られており、下部の正しい位置に固定具がかかっていなかった可能性があるとの事。

事故発生の2日前に実施された救命訓練の参加者の証言から、クリップのうち2つが当時からしっかり固定できない状態になっていたことも判明。
また別の1つも摩耗が進んでいたという。
ただし、国の代行機関として船舶の検査にあたる日本小型船舶検査機構(JCI)札幌支部が事故3日前に検査した際には、カズワンのハッチのふたの密閉状況を「問題なし」と判断している。

このようにハッチのふたを閉める4つの留め具のうち3つが不具合などで機能せず、船の揺れによりハッチのふたが開いた可能性が指摘された。

そして開いてしまったハッチからは相当量の海水が入り込み、甲板の下にある空間に流れた。
更なる高波によってハッチのふたは外れ、船体の状況から、このふたが客室の前面中央のガラス窓に当たり、破損させた可能性が高いとした。
そして、ハッチと破壊された窓からも大量の海水が船内に入ったとみられるとの事。
また、船内を仕切る隔壁に開口部があり浸水が広がり、バッテリーなどが海水に浸かり走行不能となった。
エンジンの吸気系に海水が入った形跡が認められなかったことから、バッテリーなどの水密性がなくショートして電源を失ったと考えられる。
また燃料噴射のために必要な電子部品が冠水したためエンジンは停止し、少しずつ海水が増え、やがてカズワンは水面下へと沈没した。

また船を安定させるためのバラスト(砂袋)の位置が、船首側が沈みやすい状況になっていたことも分かった。
日本小型船舶検査機構(JCI)が定期検査した際にバラストの移動を禁止したが、証言によると船尾が下がり船首が上がり過ぎるので、一部のバラストを前方に移動したり、陸揚げしたりしたとのこと。

当初、船底の損傷箇所などの修理不良も指摘されたが、船体内部に異常はなかったとしている。
引き上げ後は船底に6箇所破損個所がみうけられたが、いずれも船内まで貫通していなかった。
船体引き揚げ時に船内に溜まった海水を6台のポンプを使用して排出したことからも、船底外板損傷箇所から浸水したとは考えられないとの事。

調査では、乗客のスマホなどのGPS機能から位置情報の解析ができ事故前の航跡も判明したと言う。
また乗客のカメラに残された画像からも、乗客が最後に見た知床の風景や、時間の経過とともに海面の波が高くなっていく様子も見て取れるとの事。

運輸安全委員会は「ハッチに異常がなければ沈没していなかった」としている。

国土交通省は2022年12月16日、小型旅客船の事業者に対し「ハッチ」のふたの密閉状況について自主点検するよう指示。

第1管区海上保安本部(小樽市)は、悪天候で出航させた判断やハッチの不具合などについて桂田社長を業務上過失致死容疑で2023年春にも立件する方針だ。




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いずれにせよ、大変心が痛む大惨事の海難事故となってしまいました。
お亡くなりになれれた方のご冥福をお祈りするとともに、ご家族・ご友人に心よりお悔やみを申し上げます。
また、救助活動にあたっている隊員の皆様なども寒い中大変ですが、全員を発見するという気持ちで頑張っておられると存じます。
未発見のご家族様などの心中を思うと計り知れません。
残る未発見者が、ひとりでも助かることを祈りますが、今後、このような悲劇が2度と起きない事を望む次第です。

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コメント(1件)

  • NOEL より:

    今回の海難事故、と言うより(あえて)商業主義による人災事故に遭われた方々及びご家族や関係者の皆様にお悔やみと一刻も早い発見をお祈り申し上げます。
    実は昨年生まれて初めて知床観光に伺った際、知床クルーズに申し込んでいたのですが、ウトロ港周辺は多少風はあったものの天気は良かったにも関わらず、観光クルーズは波が高いとの理由で欠航になってしまいました。
    私自身あまり船は得意でない為、大型船のオーロラに決めていたので、外洋を見ても素人的には何故これで欠航なのかあまり納得していませんでした。
    ただ今回の事故を目の当たりにすると、やはり経験豊富な船長さんの判断は賢明だったと今更ながら納得しています。
    まさか船長がそこまで(知床おいて)経験浅いとは観光客には知る由もありませんから・・

    いくら行政が安全基準を作っても最後は個々の最終的な安全判断に委ねられる事だけに二度とこのような事故が起こらない事を願うばかりです。

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