ミサイル巡洋艦・モスクワ沈没/アドミラル・マカロフ撃沈「フェイク」の写真や動画に注意しつつ事実を認識する【ウクライナ侵攻】

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ミサイル巡洋艦・モスクワ沈没

2022年4月13日~4月14日、ロシア・黒海(Black Sea)艦隊旗艦であるミサイル巡洋艦・モスクワ(Moskva)が沈没した。
この情報はロシア国営タス通信(TASS)が伝えたので間違いないだろう。
ロシア側の発表によると、艦内で火災が発生し、弾薬に引火・爆発したとしている。
当初は沈没しておらず、火災も沈下したとしており、港へのえい航中を試みたようだ。
しかし、船体の損傷が原因でバランスを崩し、荒波にもまれて沈没したと言う。
乗艦していた乗組員は別の船に避難したとしているが、全員が無事だったのか?、ケガ人や死者がいたのかなど人的被害に関しては執筆時点ではまだ触れていない。

一方で、ウクライナのオデッサ(オデーサ・Odessa)地域軍事政権マキシム・マルチェンコ長官は、ウクライナの国産対艦ミサイル・ネプチューン(Neptune)がロシアの船に深刻な被害をもたらしたと述べている。
これは、大統領府のアンドリー・イェルマック長官と大統領府のオレクシー・アレストビッチ長官の顧問によっても確認されたとしている。
その発表のあと、ロシア国防省はミサイル巡洋艦「モスクワ」(Moskva)の火災に関する情報を出したが、火災の原因は調査中だとしていた。
その後、アメリカ国防省がミサイルが2発当たって沈没したことを確認したと発表。

かつて日本海軍は、ミッドウェイ海戦で空母4隻が沈没しても発表していない。
海軍将校はさすがに情報として知っていたが、組織が違う陸軍の少将など上級将校ですら空母は健在だと思っていた。
時代は違うがロシアが旗艦の沈没を公表したのは評価できる。

以上、モスクワが沈没したのは確定と言えよう。
第二次世界大戦のあとに設計・建造された巡洋艦が戦闘で喪失した初めての事例となる。

また、ロシアの旗艦が戦時に沈没したのは、1905年、日露戦争の日本海海戦以来である。

巡洋艦モスクワはスラヴァ級ミサイル巡洋艦の1番艦で、1982年に就役した。
P-1000バルカン超音速対艦/対地巡航ミサイル16発が両舷に並んでいる。
このクラスは合計4隻が建造され、今回沈没した黒海艦隊以外に北方艦隊・太平洋艦隊にも配備されている。
一番新しいもう1隻はソビエト連邦が崩壊したときに、建造中だった最新鋭艦をウクライナ海軍に譲渡された。
そのため、実はウクライナも同型艦を保有していると言いたいところだが、予算不足もあり工事が95%で止まったまま未完成であり運用できていない。

巡洋艦モスクワは、今回の戦争にてウクライナのスネーク島に対し艦砲射撃を行うなどしていた。
長距離レーダーSA-N-6防空システムと、短距離レーダー対応のSA-N-4 Geckoシステムを持つほか、長射程の艦対空ミサイルS-300Fフォールトを発射できるため、黒海にて広域防空任務を担っていたと推測できる。
S-300F艦対空迎撃システムの48N6M迎撃ミサイルは、マッハ5.8で、射程200km。

ウクライナ製の対艦巡航ミサイル R-360 ネプチューンは、2021年に配備されたばかりの最新鋭と言えども、もとはロシアのKh-35対艦ミサイルを改良したもの。
そんな中、艦隊防空ミサイル・システムがある巡洋艦なのに、敵のミサイルが2発も命中して沈没したというのは、かなり衝撃的な印象だ。
Kh-35じたいはマッハ数0.75以下ながらも低空を飛翔できる巡航ミサイルのため、艦船のレーダーに映らなかった?可能性はあるかも知れない。
ただし、ロシアもA-50早期警戒機くらい飛ばしていれば発見できていたであろう。
しかし、30mmCIWSが、6基も備わっているのに接近防衛にも失敗したとなると、現在、世界各国で就役している駆逐艦などの防衛能力にも疑問がでてくるかもしれない。
<注釈> 日本の護衛艦のCIWS(シウス)搭載は多くても2基。

戦時中なのでウクライナ側も戦法を発表しないが、ドローンなどを囮にして防空システムをかく乱し、標的にミサイルを到達させた可能性も考えられる。

ロシア製を参考にして改良・建造している中国海軍は台湾侵攻作戦の立て直しに迫られるかも知れない。
大型揚陸艦や艦隊を防衛する駆逐艦が、対艦ミサイルで簡単に撃沈される可能性が高まったからだ。

新型コロナの報道も同じだが、とにかくフェイクニュースも多いので、そのまま報道を信じずに自分で「裏付け」を取る必要性がある。

例えば上記の巡洋艦モスクワのニュースにある艦船が被害を受けている写真。
本当かな?と色々と調べてみると、下記にもあるが、2021年に沈没したイラン海軍の写真が使われていることがわかった。

下記のような動画も公開されているが、この艦船がモスクワなのかどうかは?、確認(裏付け)できずにいる。
構図的には上記の写真と似ているようにも感じる。

動画や写真がフェイクだとしても、モスクワが沈没したのは事実だと裏付けは取れている。
ウクライナ側の発表によると、モスクワ艦長アントン・クプリン大佐が戦死したとしている。
執筆時点でロシアは人的被害を公表していないが、巡洋艦モスクワは旗艦だけに、作戦行動中であれば、艦隊の司令官・参謀など上級将校が多数乗艦していた可能性もある。

下記はその後にSNSに出た写真。

下記は同じ人が撮影したと推測できる動画。
短い動画の為、人目を盗んでこっそり撮影したのかも知れない。
ただし、上記の写真と若干アングルが異なり、煙を出している船が軍艦かどうかも下記の動画だけではわからないので、現状としてはなんとも言えない。
上部構造物がモスクワとは異なるようにも見える。

ロシア海軍全体でも巡洋艦・駆逐艦は現在17隻(フリゲート艦を含めると29隻)しか保有しておらず、その内、黒海艦隊には巡洋艦1、駆逐艦1、フリゲート2しか配備されていない。
<注釈> 北方艦隊・太平洋艦隊から少し増援させる可能性はあるが。

ちなみに日本の海上自衛隊は、ヘリコプター搭載護衛艦 (DDH)4、ミサイル護衛艦 (DDG)8、護衛艦 (DD)28の合計40隻。
正規空母や原子力潜水艦こそ保有していないが、駆逐艦の戦力としてはロシアを上回っている。
ただし、日本海軍は中国海軍よりは下回るし、戦争はいくら武器が優秀でも最後にモノを言うのは国力なため、現在の日本の状況では厳しいと言う現実をよく理解しなくてはならない。

今回は、2022年3月24日に、ベルジャーンシク港に停泊していた、タピール級揚陸艦「サラトフ」が沈没したのとは比べ物にならない出来事となった。
黒海艦隊の象徴とも言うべき旗艦がウクライナ軍によって撃沈されたのであれば、ロシアも黙ってはいないだろう。
ロシアの方がもっと恐ろしい兵器を所有しているため化学兵器や核兵器での反撃が懸念される。
ウクライナは、自分たちが攻撃したと、戦果をアピールしなかったほうがよかったのではないだろうか?
泥沼化すると、他の国も巻き込まれたりし、第3次世界大戦に繋がる可能性もある。

のち、ロシア軍は、ネプチューンを製造していた首都キーウ(キエフ)近郊のミサイル工場を攻撃した。
撃沈されたことを事実上、認めた動きとなっている。

モスクワ撃沈の真相

約8ヶ月後、ウクライナ紙「ウクラインスカ・プラウダ(Українська правда)」がモスクワ撃沈の経緯を掲載した。

2023年4月13日、巡洋艦モスクワは沿岸から120km沖合いに居た。
120kmも離れていると、沿岸レーダーからは水平線の向こうとなり反応しない。(水上目標探知距離18km)
また、ウクライナ軍は超水平線レーダーを持っていない。

当時は雲が厚くバイラクタルTB2無人機は飛ばせなかった。
NATOの偵察機も付近を飛んでいない。
偵察衛星の索敵情報の提供は受けていない。

ところが、4月13日16時、通常レーダーが120km先の大きな反応を捕捉した。
通常は起き得ず、予想外に遠距離の目標が探知できてしまった。
厚い雲がレーダー波を反射した自然現象?とも考えられている。
レーダー反応の大きさから、大型艦と判断して試しに攻撃してみることに。
ネプチューン・ミサイルは最大24発発射可能だが、全力攻撃を行わず対艦ミサイルを2本だけ試しに撃ってみたとも。
油断していた巡洋艦モスクワは迎撃もできずに被弾した。

上記の報道が正しいのか?はまだわかりませんが、ご参考までに。

兵器解説

対戦車ミサイル・ジャベリン

対戦車ミサイル・ジャベリンはアメリカ製対戦車ミサイルFGM-148。

三脚で地上設置して使った場合で最大有効射程4000m、歩兵が携帯する場合の射程は2500mとされている。
目標をロックオンすると熱線画像イメージ(熱を発する物体を画像化する)をミサイルが記憶するので、発射したら誘導し続ける必要はなく、その場を逃げ出せる「撃ちっ放し」が可能。
メーカーのロッキード・マーチンおよびレイセオンは、ロックオンした目標に対する命中率は95%とPRしている。
最大160メートルまで上昇して装甲が脆弱(ぜいじゃく)な上部を狙うトップアタックモードがあり、戦車の装甲が比較的薄く弱点である上方を狙い撃ちできるこの「トップアタック機能」が効いているようだ。
また、上空に向けて発射すれば、低空で飛行するヘリコプターを撃墜することも可能。
ジャベリンは、タンデム弾頭を備え、戦車に着弾するとまず小さなサブ弾頭が爆発し、その後により強力なメイン弾頭が爆発して装甲を貫通する。
特に、弾頭の爆発を分散させて被害を食い止める爆発反応装甲を備えたロシアのT90戦車など、最新式の戦車の装甲を貫通する能力を持つ。
ウクライナは2021年末現在で発射機377基、ミサイル弾頭を1200発保有していた。
その後、支援で追加援助されている。

仮に日本の陸上自衛隊の戦車や、アメリカの戦車でも、このジャベリンによる攻撃を受ければひとたまりもない。
逆に反撃する場合、陸上自衛隊にはジャベリンに似た01式軽対戦車誘導弾がある。
ただし、数が少ないのでぜんぜん足りないようだ。

地対空ミサイル・スティンガー

地対空ミサイル「スティンガー」(射程4800メートル、重さ15キロ、赤外線誘導)。
このスティンガーによるヘリコプター攻撃なども有効だとされている。

ウクライナは射程距離がより長い、ソ連時代の古い防空システムになる長距離地対空ミサイルシステムS-300も運用している。
これは同時多目標交戦能力あり、アメリカのスタンダードミサイルに相当する。

そのため、ロシア空軍の航空機も高高度は飛ぶとレーダーに発見されるため、低空しか飛べない。
しかし、低空飛行するとスティンガーで落とされると言う構図のようだ。
ロシア軍はすでに、軍用機が検知されないよう夜間の飛行を余儀なくされている。

ちなみにS-300V4は択捉島(ロシアが実効支配中)にも配備されており射程は400kmある。

対艦ミサイル・ネプチューン

ロシアKh-35対艦ミサイルをもとに、ウクライナが独自に改良・製造しているのが対艦巡航ミサイル R-360 ネプチューン。
2021年からウクライナ軍に配備開始された。
陸上の移動式ユニット部隊から発射可能で、低空を飛行・海面スレスレ(高度3m~10m)を900km/hで飛翔する巡航ミサイルになる。
旧ソ連じだいからウクライナでは兵器工場が多かったので製造もできる訳だが、最新型のため、ミサイル保有数はまだそんなに多くはない模様。
最大射程距離は非公開だが300km未満(約280km)とされていた。
モスクワ被弾後、ロシア艦艇がオデッサからから後方に退避したことからもわかる。
ハープーンに似た性能と運用方法であり、ウクライナは武器の輸出もしていることから、ネプチューンはインドネシアなど数カ国が購入するととされている。
ちなみに、巡洋艦モスクワも、ウクライナの南東部ミコライウで建造されていた。

日本の場合、似たようなシステムとしては陸上自衛隊が地対艦ミサイル12式地対艦誘導弾SSM-1(改)のシステムを保有しており、射程距離は200km以上。
ただし数が足りないので、九州・沖縄方面のみへの配備となっている。
なお、部隊を標高が低い場所に展開させた場合、地球は「丸い」のでレーダー単独で水平線先の艦船を感知できる距離は20km~30km程度になる。
よって、早期警戒機や偵察衛星などから、正確な敵位置情報は不可欠となるため、連携が取れないと有効に使えない。
そのような意味でも、ウクライナがロシア巡洋艦への攻撃が成功したのは、正確な位置情報をアメリカやEUから得ていた可能性が高い。

サラトフ沈没

当初、ロシア海軍のアリゲーター級戦車揚陸艦(タピール級揚陸艦)「オルクス」が撃破されたとされていたが、のち「サラトフ」(BDK-65)が沈没とウクライナも訂正している。
約4500トンで、兵員約400人と戦車20両を輸送できる。
第197揚陸艦旅団:セベルナヤ湾/セヴァストポリ 所属であった。
そもそも、黒海艦隊は、1997年にロシアとウクライナ間で艦隊を分割していた。

報道などで沈没したオルクスは大型艦だとされる。
しかし、日本の海上自衛隊は1万4000トンのおおすみ型輸送艦輸送艦を3隻持つなど、ロシアよりも輸送艦は3倍大きいので違和感を感じた。
ただし、被害を受けた際のダメージを考慮すると、輸送艦は大きければ良いと言う問題でもない。
更に日本の輸送艦は3隻 + 420トンと小型輸送艇1号型が1隻しかないので、1隻撃沈されるだけでも海上輸送能力ダウンが大きい。
500年以上と伝統的に日本は戦時輸送が軽視されている。

アドミラル・マカロフ被弾

2022年5月5日、フリゲート艦「アドミラル・マカロフ」が被弾したとの情報あり。
対艦巡航ミサイル「ネプチューン」にて撃沈したとも、
詳しくは分かり次第追記予定。

アドミラル・マカロフは、アドミラル・グリゴロヴィッチ級のフリゲート艦で一番新しく2017年に就役。
対艦ミサイル(巡航ミサイル)のカリブルNK、超音速対艦ミサイル・P-800が発射可能で、ロシア艦としては最大の長距離対地攻撃力を持つ最新鋭艦の1隻。
旧型の巡洋艦モスクワは2次元レーダーだった可能性があるが、アドミラル・マカロフは3次元式の対空レーダーを備えているとされ、50km以内に接近したミサイルを感知可能。
対空ミサイルとしては、シュチーリ-1SAM用の12連装VLS×2基を搭載。
攻撃システム的には同時に256目標へ攻撃可能な能力を有している。(ただし、そんなに弾数を搭載できない)
近距離対応として、30mmCIWS×2基もある。

巡洋艦モスクワ沈没でさえ衝撃的だったが、最新鋭艦も沈没したとなると、艦艇の対空能力に世界各国も危機を覚えたことだろう。
これまで艦艇は、魚雷を受けると海水が入り沈没するため対潜能力が重要であったが、ミサイルの性能向上により、今後はミサイル向けの対空防御の重要性が求められるようになったとと考えられる。

アドミラル・マカロフは、ロシア海軍黒海艦隊に所属しており、同型艦があと2隻黒海で展開していると思われる。

黒海艦隊の内訳(フリゲート艦以上)

巡洋艦1(うち沈没1)、最新鋭フリゲート艦3(うち沈没1)、旧型フリゲート艦2

ウクライナとの戦いでメシア艦艇は、もう陸地に接近して作戦を行うのは無理だろう。

日本の海上自衛隊は、フリゲート艦よりも大型だが巡洋艦ほど大きくはない「駆逐艦」クラスが多い。
そのため、同規模艦艇(フリゲート艦)は、最新鋭の「もがみ型護衛艦」くらいとなる。
近接防御火器システム(CIWS)としてはファランクスに頼らず、SeaRAMを搭載しているため、対空能力は高い。
しかし、ロシア艦が立て続けに被害を受けていることを考えると、有事の際には護衛艦も無事と言う事はないだろう。
中国艦は、ロシアの防空システムを採用したりしているため、より危機感を抱いていると推測できる。
西側の防空システム設計が漏えいしないよう、より一層のスパイ対策が求められるだろう。

ウクライナが善戦している要因

ウクライナが大国ロシア相手に善戦している理由は下記の事項が考えられる。

情報

なんと行っても敵に打撃を加えるためには「情報」が命となる。
どんなに優秀な武器を持っていても、敵が今、どこにいるのか?位置を把握できなければ、攻撃・反撃もできない。
そのため、戦闘においては情報が最も重要となる。
その点、アメリカやEUなどの偵察衛星や、早期警戒機などからの情報提供も受けていると考えられ、ウクライナは的確に防衛作戦を建てられていると推測できる。
日本も軍事衛星をもっとたくさん上げたいところだ。

大統領が逃げなかった

当初は、ウクライナの大統領が国外に亡命などして政権の維持を図るとも予想された。
しかし、ゼレンスキー大統領はキーウ(キエフ)に留まって軍の指揮をとり、国際社会に支援を求めている。
また、冬だと言うのにTシャツ姿でテレビに登場して演説している姿も印象的だ。
最初は大統領ともされる人物がそんな姿でと感じたが、これも戦略だったの?
よくよく背広・軍服・Tシャツでと比較してみると、スーツであれば政治的、軍服であれば軍事的と言う印象になるため、Tシャツのほうが純粋に祖国を守るために働いていると言う主張にはぴったりだろう。
そもそも、ウクライナ人は自分たちの祖国を守ろうと必死なため、大統領に共感するものと考えられる。
このままウクライナが勝利すれば、間違いなく英雄になる人物と言える。

大義名分

プーチン大統領は、ロシア側の主張として色々と大義名分を述べてはいるが、実際に現場で戦う兵士にとってはどうだろうか?
ロシアとしては工業力もあるウクライナがEUに加盟すると、首都からも遠くない喉元に敵の基地ができてしまうため、国家として困るのは分かる。
しかし、末端の兵士にとってはそんなことは正直どうでもよく、そもそも「軍事演習」だとして駆り出されていた訳だ。
最初から戦争に行くぞと言われて出陣するのと、訓練に行くぞと言われて無事に戻って来れると考え出て行ったのでは当然士気も異なる。
突然、訓練は辞めて戦争すると言われたのであれば、戸惑う兵士も多かったであろう。
ウクライナがは自国を侵略する敵を撃退すると言う、これ以上ない大義名分があるため士気も高いのは間違いない。
通常、戦争の場合は、広い戦線を防衛する側の方が不利だ。
攻撃する側は、防衛している敵の「隙」をつけるため、先制攻撃したほうが有利である。
しかし、キーフ(キエフ)を落とせなかったのは、狭い範囲である。
このように拠点だけの防衛であれば攻撃側は隙を突けないのため防衛側のほうが有利である。
今回、ウクライナ軍はそこでうまく機能した。
もちろん、敵の位置を知れたと言う情報があっての成功と言えるる
春を迎えると凍結していた地面も緩むため、戦車などの運用に制限が出て来る。(道路など地面が硬いところしか走行できなくなる。)
となると、侵攻する側のロシア軍は不利になる。

西側諸国のウクライナ支援

戦争での戦闘の部分は情報が最も大切なのは上記に記載したが、戦争を遂行するためにはそもそも「国力」が問われる。
国力(経済力・食料・エネルギー力など)がなければ1ヶ月程度は戦えても長期戦になると厳しい。
今回、アメリカ・ヨーロッパ諸国も軍隊こそ派遣しないが、ウクライナを支援していることは大きい。
逆にロシアへの支援はベラルーシ程度で、今のところ中国が中立の立場をとっているのも大きいだろう。
しかし、このウクライナとロシアの両国を見ても、日本の立場から考えるとうらやましい限りとなる。
日本は食料自給率も悪いし、石油・ガスなどのエネルギーも大半を海上輸送に頼っている。
要するに戦争となってしまった場合には、制海権・制空権の2つを守る事が出来なければ、日本は戦争を継続することができなくなる。
ただ、広い海を防衛するのは非常に困難である。
ロシアの黒海艦隊が数ヶ月の間に2隻も沈んだとこでもよくわかる。
いくら自衛隊が有能であっても、食料や石油が入ってこなければ、作戦を遂行できなくなる。
そもそも、その自衛隊も人材不足であり、整備不良なのか?戦闘機が墜落するじたいにも陥っている。
海上自衛隊の護衛艦「いずも」にF-35Bを搭載しても、航空機の運用は航空自衛隊が行うのは海上自衛隊の人が足りなく、整備士などを教育する時間もないためだ。
優秀な護衛艦や戦闘機を増やしても、人数が増えなければ当然効率よく使えない。
人が足りなければ、制海権や制空権も維持できないのは当たり前となる。

いずれにせよ、戦争と言うものは、当事国にとってはとてつもない不幸を招く。
ロシアは歴史的に見ても好戦国であるため、今回のように戦争を起こしてもおかしくはなかった。
そのため、一番重要なのは「どうして戦争を止められなかったのか?」と言う点になる。
今後、2度と戦争を起こさないためにはどうすれば良いのか?と言うことを、誰もが真剣に研究することが世界平和につながる。

以上だが、ウクライナが勝利を収めると言う事ではないため勘違いはしないで頂きたい。
このままロシアがウクライナ全土から撤退しない限りは、ウクライナの勝利とは言えない。
少しでも領土を減らして戦争が終結すれば、ウクライナの負けである。
しかし、報道でもロシアが弱いなどとしてニュースを流すため勘違いしやすい。
当初の予想よりも少ないとは言え、ロシア軍がウクライナ領を占領している地域があるのは事実だ。

日本の防衛課題

ウクライナでの戦争を見ていると、ロシア軍も首都・キエフへの侵攻部分でとても時間を要している。
接近はできても、キエフに進めないのだ。
すなわち、最後の砦に戦力を集中して防御するのは有利と言う事がわかる。
食料や弾薬の補給も近距離だし、命令伝達も距離が近ければ近いほど行いやすいと言う理由もある。

そのように考えると、日本の国土は狭いので、広い領土の国と比べれば防衛しやすいと言える。
ただし、日本は「海」に囲まれている島国だ。
その海は、敵を寄せ付けにくいと言えるのだが、アメリカやヨーロッパ諸国がウクライナを支援しているように、隣国と日本が陸路で繋がっている訳ではないので輸送が困難となる。
なんとか制空権を維持できたとしても、広い太平洋で敵の「潜水艦」が輸送船団を攻撃しやすい状況と言える。
当然、日本への石油タンカーなども攻撃目標となるため、日本が資源不足に陥るのも目に見えている。
食料も約70%輸入に頼っているため、食料不足にもなる。
日本は戦えて1ヶ月~長くても3ヶ月であろう。
自衛隊の弾薬ストック量が少ないのは有名な話でもある。

ウクライナに対してのアメリカの対応を見ても、日本が侵略を受けた場合、アメリカが本腰で部隊を派遣してくれるとは限らない。

自衛隊の戦力で、侵略してくる部隊を単独で撃退することは、ほぼ不可能。
自衛隊の戦い方としては「時間を稼ぐ」と言う作戦しかない。
この時間稼ぎは、同盟国の軍隊が日本に入ってくれるまで時間を稼ぐと言う意味になる。
しかし、この戦法は攻撃を受けた側であればどんな国でも取る方法と言える。
やっかいなのは、日本は原子力発電所が海岸にあり、しかもあちこちにあることだ。
すべて防衛するのは無理なため、敵からみれば小規模な部隊でも占領しやすい。
1つでも占領されて原発を壊すぞと脅されでもしたら、日本政府は降伏するしかない。

戦争は想定外の連続が続き、常に状況も変化するため、情報収集・指揮能力・命令伝達手段などすぺてにおいて高くないと、防衛しようにも機能しない。

前述したとおり、自衛隊の人員不足も深刻となっている。
少し詳しく説明すると、護衛艦いずもを空母化しても、運用するための人材となる整備士などが定員割れの状態。
他の部隊から人員を回しても、人材を失ったその部隊がこんどは運用できなくなる。
自衛隊機の墜落などもここ数年あるが、整備不良なのか?とも感じてしまう。
人員が集められずF-35Bに関する教育も十分にできない。
海上自衛隊なのに、F-35Bなどの運用を航空自衛隊が行うのには、海上自衛隊も人員不足で新たに航空機運用まで手が回らないと言う側面もある。
むしろ、イギリスのように空母は自前でも、搭載航空機はアメリカ海軍に託すような方法が良いだろう。

こんな事は申し上げたくないが、若者の人口が減っている以上、将来的に国防のためには日本も「徴兵制度」を導入するしかないだろう。
ただし、現在の法律では徴兵もできないため、もし戦争になれば「緊急募集」になることは間違いない。
しかし、そうなると企業が活動できなくなるため、経済のダメージも大きい。

また、自衛隊員は法律上では特別国家公務員であり、軍人ではないため、敵前逃亡しても単なる職務放棄であり、外国の軍隊のように重い罰に問われない。
今の日本には、そもそも軍法会議がない。

このように高額で優秀な兵器がある分、人手不足と老朽化した兵器の更新もままならず、本当に必要なところに予算が使われていないため、自衛隊の戦力を高く評価することができない。

ちなみに、日本人がウクライナに行って「義勇兵」となることは、とても推奨できない。
日本人の弾を受けてロシア軍の兵士が倒れた時のことを想像してみて頂きたい。
ロシアからしてみれば、日本が義勇兵と言う名を使って、兵士を派遣した受け取られてもおかしくないのだ。
ロシアに口実を与えれば、日本国民すべての命にも関わる問題になりかねない。

戦争回避が重要

とにかく戦争は起こしてはならないと言うのが、今回のロシア軍の状況を見てもわかるす。
ロシアのプーチン大統領も、下記のようにコメントしている。

日本の歴史教科書について「誰が原爆投下したかを言わず、真実を無視している」「誰が原爆を落としたのかは言わないことになっている」

とは言え、北方領土を不法占拠しているのもロシアであり、それを事実上容認しているのもアメリカである。
結果的に正義や悪の概念は、その人の主観によって容易に変わる。

ウクライナが勝利しても、ロシアが勝利しても、両国の間には遺恨が残ってしまう。
よって結論を言えば、やはり「戦争を起こしてはならない」と言える。
今回、どうしてプーチン大統領の決断を世界各国が事前に止めることをできなかったのか?、その背景部分をきちんと検証して今後に生かさなくてはならない。